テーマ展「水府美術譚」WEBよもやま話 その5

web よもやまばなし~水府美術譚より~ シーズン4
 

その5 後期がスタートしました。

そして動物の画がやっぱり多いのです。
みなさんこんにちは! フーテンの風狂野郎です。
選挙、高校野球、夏休み・・・・う~ん暑い!あっちっちの夏はすぐそこまで!

そんな中、7月11日(月)に展示替えを行いました。
20点の掛軸・屏風が入れ替わりました。また、場所を移動したものが3点あります。

さて、今日は鮎の双幅の画、そして展示替えで鶴の画と蝦蟇仙人の画の2点を展示させていただいた隣県栃木の画人小泉斐(こいずみあやる)を紹介させていただきます。
簡単にプロフィールから・・・・

明和7年(1770)下野国(現在の栃木県)益子の鹿島神社神職の子に生まれました。本姓は木村、幼名は勝(木村勝)。画を描くのが好きで、11歳で同じ下野は茂木(もてぎ)の島﨑雲圃(しまざきうんぽ)の門人となりました。
また15歳ごろから立原翠軒や藤田幽谷(東湖の父)、藤田北郭など彰考館の学者(水戸藩士)たちと交流するようになりました。益子や茂木のように水戸藩領に近接した地域は文人や学者の交流がさかんだったのです。
さて、島﨑家はもともと近江(今の滋賀県)の日野の出身で「近江商人」として関東に進出、茂木で酒造を始めた家でした。斐は寛政年間になると雲圃に伴われ近江と下野との往来を頻繁にするようになります。雲圃は近江の高田敬輔(たかだけいほ)という京狩野系の画人に画を習いました。斐の繊細なタッチによる鮎画などの絵画の特質の源は敬輔にあったのかもしれません。ところで斐は寛政7年(1795)に『大日本史』編纂のために京や大坂に出張していた立原翠軒や藤田幽谷、小宮山楓軒らとその帰途、富士登山を行い、山頂や登山の様子を彩色の版画にしています。この前年に水戸藩士の大場維景が富士山に登っていることも翠軒たちに影響を与えました。
(展示室では参考資料1を参照下さい)
翠軒の子、任(立原杏所)が斐について画を習うようになったのはこの頃です。また斐が水戸の彰考館の板戸に鮎の画を描いたともいわれています。

斐は30歳頃、那珂川上流の城下町黒羽の温泉神社の神職小泉家の養子となりました。
50歳ごろ黒羽城下の鎮国社の宮司となり、黒羽藩のお抱え絵師的な存在となり、大幅の黒羽城周辺の真景図などを描いています。地元那珂川で見た鮎の画をはじめ、道釈画を含む人物画や風景画などの分野でさまざまな作品を残しました。安政元年(1854)没、享年85歳。18世紀半ばから19世紀半ばを駆け抜けた末の大往生です。

さて2005年(平成17年)に栃木県立美術館と滋賀県立近代美術館で、小泉斐と斐の師の島﨑雲圃のさらに師の高田敬輔の展覧会が開かれました。小泉斐と高田敬輔、2つの会場で主役が入れ替わるので副題が栃木が「江戸絵画にみる画人たちのネットワーク」そして滋賀が「近江商人が美術史に果たしたある役割」そして図録は以下にあるとおり主役を入れ替えた2通りのものです。

栃木・滋賀県美図録

左が栃木県立美術館版  右が滋賀県立近代美術館版

この図録には斐の14点の鮎図の図版が収載されています。やはり1匹水面から跳ねているものばかりです。横長のものも2点あり、本当に見ていて飽きません。

さて、展示替で追加した中に鶴図の「双幅」がありますが実は、この作品本当は三幅対です。中幅を抜いてあります。中幅は下に掲げた写真のとおり。神亀(瑞亀)に乗って仙桃を持った寿老人図です。本当は三幅対が作者の意図ではありますが、今回は鶴の画にこだわっていますのでご勘弁を・・・・蝦蟇仙人は蝦蟇蛙と二人三脚の仙人。このちょっぴりキモカワの画は会場でぜひご覧下さい。

鶴図 左(松と鶴親子)

鶴図 左(松と鶴親子)

寿老人図 ※1

寿老人図 ※1

鶴図 右(竹石と鶴)

鶴図 右(竹石と鶴)

註※1
寿老人と福禄寿は同じ七福神の仲間でありますが、中国のもとの福禄寿の図像は「三星図」すなわち福星・禄星・寿星の三星で表されたものです。福星は蝙蝠(コウモリ)で表します。福と蝠が「ふく」で音通するためです。禄星は鹿です。鹿も禄と「ろく」で音通します。寿星が擬人化すると寿老人という、長頭短身の老人の姿になるのです。寿を霊芝などの植物で表す場合もありますが、老人の姿で表すほうが多いのです。日本ではこの三星=福禄寿の一部である寿老人を福禄寿図=寿老人図とする誤解により、2つの寿老人と福禄寿という、どちらも長頭、短身の老人像をうみだしてしまったのです。またややこしいことに寿老人は鹿をともない、福禄寿は鶴と一緒という構図が日本では描かれているので、ますますごちゃごちゃになりますよね。

ここでは鶴と一緒でも寿=長寿の象徴としてイメージを重ねたと解釈し、亀に乗る「寿老人」ということにします。

お知らせ:
すでにホームページでもお知らせしていますが明日7月18日(月:祝日=海の日)、展示替の後はじめての展示解説を行います。11:00と14:00の2回行います。
お時間がありましたらぜひ、少し涼しい歴史館へ・・・。